オットー・ダルシュミットの弓チョコレートブラウンの上質な材料が用いられており、非常に操作性、音の伝達性に優れる逸品です。一昔前の弓で、スティックにはmade in GDR(東ドイツの意)のスタンプがあります。東西ドイツ時代のもので、よい材料を贅沢に使うことのできた、恵まれた時代のものです。この弓の特徴として、カーブの頂点が気持ち程度ですが、先弓寄りに入っています。普通の弓よりも先弓側で弦に吸い付く下向きの力が強くなるので、先弓で弓が震え難いです。反り直しの痕跡は無いので、製造時からこの仕様だったのだと思います。加えて、名工ペカットと同じ楕円形のスティックに仕上げられており、横からみると\"ししゃも\"のようなふっくらした雰囲気、上からみるとすっきりした造形です。これにより先弓でも音が掠れず、太い発音が可能です。この形の欠点として弓の重量が重くなり勝ちなのですが、流石、材の選び方は抜かり無く、軽く、しかし靭やかな材を選んでいるようで約58.83gと軽い仕上がりです。ヘッドの形はペカットではなく、サルトリーに近そうです。(ペカットの力強さ、サルトリーの優秀な操作性の両立を図ったのかもしれません。)以上、非常にドイツらしい、実用的かつ質実剛健なジャーマンボウと言えると思います。ただ巻線には使用感が目立ち、劣化のためにシリコングリップ、テープによる養生の痕跡があります。毛替えの必要はなくこのままでもご使用可能ですが、次の毛替えの時にでも替えていただくとよいかもしれません。また左に膨らむカーブが入っています。演奏していると右側に膨らむ力がかかるので、問題ないかと思いますが、気になるようなら反り直しも検討してください。(完全に主観ですが、この点はこの弓の個性として、全く問題無いものだと思います。むしろ安定感を生み、弾きやすい面さえある気がします。)金具はシルバー、木材はもちろんフェルナンブーコです。昨今、ブラジルウッド、それからイペ材に続き、サパンウッドなる代替材が出てくるほどフェルナン材は希少なものになっています。ちなみに購入時は30万円ほどでしたが、今ではそんな値段では買えないと思います。(輸入業者もネット上からラインナップを削除してしまいました。。。)この機会に是非、御検討下さい。よろしくお願い申し上げます。